僕のおばあちゃんはオシャレでオチャメで好奇心旺盛な1923年生まれの97歳です。
若い頃から踊る事が好きで、何年も日本舞踊をしていたのですが
膝が痛くなってしまい、残念ながら踊りをやめてしまいました。
昔から多趣味だったので、今は数独、折り紙、タブレット等、いろいろと楽しんでいるようです。
大好きなお茶を飲みながらお菓子を食べるのも、おばあちゃんの楽しみです。
そんなおばあちゃんの趣味の一つでもある俳句を・・・
よろしかったらご覧になってくださいね。



 【 二〇二一年三月の俳句 】

 目ざめれば 春は曙 花かおり

 ふんわりと 川流れゆく 春の雲
 【 二〇二一年二月の俳句 】

 つつましく 空家の桃も 開きけり

 朝の庭 ポツンポツンと 落ち椿
 【 二〇二一年一月の俳句 】

 紀の川の 流れは静か 初山河

 初雀 つれもて去りし 杉林
 【 二〇二〇年一二月の俳句 】

 もみじ山 しぐれて暗し 登山道

 冷えきった 美しさあり 冬の月
 【 二〇二〇年一〇月の俳句 】

 青みかん 食べる人もなし 青かざり

 バス降りて 身に沁みてくる 夜寒かな

 紀の川に うつる町の灯 秋深し

 冬ざれて 松のみどり増す 我家かな
 【 二〇二〇年九月の俳句 】

 稲刈りの 音も止みけり 町灯り

 秋鯖の 味はよろしき 夕餉かな

 ぶどうの実 食べて見合わす顔 子供達
 【 二〇二〇年八月の俳句 】

 木から木へ うつり鳴きゆく 朝の蝉

 夕虹の ながめよろしき 夏の暮

 柿の実を 今日は見つけり 散歩道
 【 二〇二〇年六月の俳句 】

 孑孑は 浮きつ沈みつ 暮るる川

 うたた寝の 夢は消えたり 夏の月
 【 二〇二〇年五月の俳句 】

 筍の 味はよろしき 夕餉かな

 松蝉の もう一度ききたし 今朝の声

 肌にふれ 寒く暑くなし 初夏の風

 山肌の みどり近づく 夏の山
 【 二〇二〇年四月の俳句 】

 ちらほらと 月に照らさる 山桜

 春の句を 一句拾いし 日暮れ道

 ぶらんこの きしむ音なり 春の風
 【 二〇二〇年三月の俳句 】

 ふんわりと 流す白雲 春の空

 春の川 ゆっくり海を 目ざしいる

 蜜求め 花に飛びくる 春の蝶

 やわらかな 春の夕暮れ バスの帰路
 【 二〇二〇年二月の俳句 】

 明るくも 暗くも見える 朧月
 【 二〇二〇年一月の俳句 】

 冬ざれて 山の枯れ葉も 目立ちけり

 古暦 思いきりよく 巻き取りぬ

 見上げれば 雲一つなし 初山河
 【 二〇一九年一二月の俳句 】

 冬ぬくし ブランコきしむ 遊園地

 椅子席の 増えし今年の 冬座敷

 寒雀 身はふっくらと 声細し

 夜明けまで 又もぐりけり 十二月

 風に舞う 枯葉くるくる から回り
 【 二〇一九年一一月の俳句 】

 秋天に 紀伊の山々 色深し

 大和路に 心残りし 木守柿

 紀伊に住みて はじめて見しは 蜜柑山

 曼珠沙華 名もなき畑の 錦なり

 草紅葉 さびしさ染める 夕日かな
 【 二〇一九年一〇月の俳句 】

 桐一葉 落ちて我家の 秋を知る

 ゆらゆらと 小石に止まりし 秋の蝶

 今日のバス つるべ落しに 追いつけず

 月の下 手入れし松の 美しき

 鈴なりの 柿に止まりし 帰路学生
 【 二〇一九年九月の俳句 】

 なつかしき 友よ敬老の 舞姿

 草木の そよぎは淋し 秋の声

 一声で 目ざまし時計 草雲雀

 冬支度 すませどはなせぬ 夏衣

 白雲の 流れ美し 秋の空
 【 二〇一九年八月の俳句 】

 夕顔は うれしき一夜の 花盛り

 父母の 好物あれこれ 盆供養

 月下美人の 一夜は恋し 花ごころ
 【 二〇一九年七月の俳句 】

 七夕や 私の願いは 海に舞う

 登校児 ふかれてよろこぶ 青田風

 はっきりと 別れて流る 夏の雲
 【 二〇一九年六月の俳句 】

 聞こえくる 蛙の合唱 田植時

 山彦は 夏をよびけり 今朝の風

 月見草 しおれて淋し 朝の道

 ゆく人の 姿も明るき 夏の色

 あたたかき 心の宿や 夏の月
 【 二〇一九年五月の俳句 】

 海一線 空一線や 汽車の窓

 アマリリス 明るき部屋に 早がわり
 【 二〇一九年四月の俳句 】

 平成を 惜しみ桜の 令和咲き

 ふんわりと 山こえて来し 春の雲

 平成は 静かに暮るる 夕桜

 鰡とびて 遊ぶ川辺の 日暮かな

 百千鳥 紀の川越えて どこへ行く

 花冷えや バス待つ朝の 長きこと
 【 二〇一九年三月の俳句 】

 冬布団 はなさず春の 朝寝かな

 綿菓子と 指さす子等よ 春の雲

 老いて着し 衣装は派手よ 春寒し
 【 二〇一九年二月の俳句 】

 冴え返り 春遠ざかる 思いあり

 日々通る 土手の青みも 目立ちけり

 春の雨 松の葉ぬらし 晴れる空

 白魚は 目をみつめ合う 鉢の中
 【 二〇一九年一月の俳句 】

 庭に降りて チュンと鳴きたり 初雀

 除夜の鐘 終われば賑わう 初詣

 凪川に 鰡飛び遊ぶ 日暮かな

 数えつつ 七草粥や 老の箸
 【 二〇一八年一二月の俳句 】

 働けぬ 身でも忙し 師走かな

 鮮やかに 色は残して 冬もみじ

 思い出は めぐりて恋し 寒椿

 冬鳥は 声を残して 雲空へ

 バスの窓 冬夕焼の まぶしけり

 山茶花は こぼれてすぐ咲く 美しさ
 【 二〇一八年一一月の俳句 】

 寺門を 染めて美しき 柿紅葉

 冬萌の マンションの庭 目立ちけり

 湯たんぽに 足のせ今夜の 夢たのし

 松の手入れ 終りて冬待つ 松となり

 なつかしき 母子の姿 七五三

 仕事終え 静かに眠る みかん山

 音もなく 通りすぎたり 初しぐれ
 【 二〇一八年一〇月の俳句 】

 老人は 笑って楽し 運動会

 秋しぐれ そっと傘置き 出掛けたり

 バスの窓に 身をよせ見たら 帰り花

 山も田も 静かに眠る 秋しぐれ

 葉と共に ゆらゆらコスモス 種ちらす

 ハロウィンの テレビ見て眠る 静けさよ
 【 二〇一八年九月の俳句 】

 コスモスや 風には強し なよなよと

 合わす手に トンボ止りし 墓参り

 露草に 思い出多き 土手の道

 歳時記の ページ進みて 秋の色

 台風の 音に家族は 身をよせて

 鰯雲 分かれて深し 青き空

 秋の田や 夕陽に沈む 黄金色
 【 二〇一八年八月の俳句 】

 青田道 駅までつづく 朝の色

 くっきりと 姿を見せし 夏の山

 夏料理 さめていただく あつき色

 バスの窓 青田がつづく 町の中

 ゆっくりと 山こえて来し 雲の峰

 バスのドア あわててしめる 残暑かな

 わが句集 楽あり苦あり 夏の果て
 【 二〇一八年七月の俳句 】

 梅雨晴れや 雲はちぎれて 流れゆく

 風に向き 歩めばヒラリ 夏落葉

 太陽は 西日となりて 海つつむ

 梅を干す 三日三晩の 香りかな

 雨雲を くぐりて出しか 夏の月
 【 二〇一八年六月の俳句 】

 土手の下 緑一色 夏の風

 あんた長 わたし半袖 薄暑かな

 宵待ちて 夜を送りし 月見草

 雲の峰 くずれて今日も 晴れとなる

 紫陽花や 日々変りゆく 庭の色
 【 二〇一八年五月の俳句 】

 さすらいて 軒に帰り来し つばめかな

 大ばあちゃんと 呼ばれ幾年 藤の花

 孑孑や 浮きつ沈みつ 育ちゆく

 三宝柑 その字の如く 神前へ

 花終り 寺一面の 若葉かな

 春愁や 友あり句あり 愁なし
 【 二〇一八年四月の俳句 】

 柳の芽 なよなよキラリ 光りつつ

 チューリップ 人待顔や 朝の庭

 さくら咲く 太き幹にも チラホラと

 東風吹きて さわぐ下校の 子供達

 葉の下で 育つ梅の実の 青きかな

 日の本に 住みてたのしき 花の宴

 石ぬらし さっと消えけり 春時雨
 【 二〇一八年三月の俳句 】

 湯たんぽで 早寝朝寝の こころよき

 老いた身に 今年も寒き 春彼岸

 春の雲 ちぎれふわふわ 流れおり

 恋猫は 暗きところを 好みけり

 茜空 冬夕焼の 美景かな

 黄梅を ライトアップの 田舎駅

 冴える夜は 心も老いて 床の中

 初雷は 春つげる音と 聞きいたり
 【 二〇一八年二月の俳句 】

 初雪や ちらほら舞いて 終りけり

 行儀よく 並んでおでん グツグツと

 遠山を 残して消えけり 冬の虹

 獅子舞の 大口パックリ せまり来る

 侘助や 茶人のこころで 眺めけり

 湯たんぽを いだき朝まで 夢深し

 福笹の 大判の小判は 重たけり

 年賀状 少なくなりぬ 年の坂

 椿咲く 松葉の間に 花一輪
 【 二〇一八年一月の俳句 】

 お雑煮の 味はよろしき お元旦

 初夢で 父母にも逢えて 流されし

 思わずも 初湯いただき 若返る

 老いて尚 湯舟に白き 木ノ葉髪

 競い馬 真面目に走る 冬の空

 注連縄の 米に雀の 初礼かな

 枯れ山に たつあざやかに 冬紅葉

 寒雀 赤信号で 土手渡る
 【 二〇一七年一二月の俳句 】

 清らかな 部屋となりけり 水仙花

 風に散る 銀杏並木や 通り雨

 海と空 一つとなりて 冬茜

 苦い雲 のこして晴れし 冬の雨
 【 二〇一七年一一月の俳句 】

 淋しさも ありて美しき 冬のバラ

 眠る山 幾つもくぐり 道の駅

 雲の峯 ぐんぐんのびて 山つなぐ

 冬の蚊に あわて食卓 平手打ち
 【 二〇一七年一〇月の俳句 】

 無花果の 無人売場で 花がさく

 パンダの子 育ちよろしき 秋の風

 雑草の 中に桔梗の 凜として

 発車ベル 友と別れや 秋時雨

 沈む日を 追いて咲きけり 月見草

 散る銀杏 見ながらバスは 走りけり

 子をつれて 今年も去りぬ 秋つばめ

 赤い羽根 つけし小学生は 悠々と

 鰯雲 二匹に別れ 暁れ渡る
 【 二〇一七年九月の俳句 】

 敬老日 孫よりのパジャマ 抱く夜かな

 色変えぬ 松は狭庭の 王者かな

 地蔵盆 今日は手合わす 子供達

 野の草は 色さまざまの 紅葉かな

 落日に 流れゆく赤 曼珠沙華

 散るさまも 又美しき 柿紅葉

 松茸の 香り頂く 食事会

 南口の 色の花なり 仏桑花

 山から山へと つなげば海よ 秋の空
 【 二〇一七年八月の俳句 】

 流しソウメン 老いてうれしき 昼餉かな

 庭花火 ポツンと落ちし 闇の中

 わんぱくが 暑いとさわぐ 極暑かな

 梅干して 素早く入る 日影かな

 暑さ残る 空につめたき 夏の月

 花の朝 月下美人の 涙かな

 浄土寺の 読経おわれば 蝉しぐれ

 うき人形 すくうもたのし 夏祭り

 葉をくぐり 風に咲きけり 蓮の花
 【 二〇一七年七月の俳句 】

 雨上がり 墨絵の如き 夏の山

 遠雷に 夢やぶられし 朝の雨

 水草に 浮きては尾をふる 源五郎

 甲羅干す 亀並び居り 夏の川

 いさかいも 笑顔となりし バラ一輪

 幸せを 祈り手合わす 星まつり

 苗物の みどりは梅雨の 雨を待つ

 映るもの 皆うつしてる 青田水

 品も良し 淋しさもあり 杜若
 【 二〇一七年六月の俳句 】

 水平線 やっとこえゆきし 大西日

 美しく 育ちて来しか 揚羽蝶

 鈴蘭は うつむき咲きて 可憐なり

 山肌は くっきり青く 夏の風

 誕生日 静かに仰ぐ 夏の月

 夏布団 かるくて夢は 深かりし

 浜木綿や 一度は降りて 見たき駅

 雨風に ゆられて月待つ 青芒

 浮きしずみ 孑孑およぐ 池の隅
 【 二〇一七年五月の俳句 】

 静かなり 桜若葉の 道となり

 みかん山 花は浜辺に 向いて咲き

 マンションの 鯉は泳げず 眠り居り

 衣替え おくれて今日の ぬくきかな

 燕の子 軒に見えるは 口ばかり

 川で遊ぶ 鵜の声ききたし 土手の道

 帰路長し たそがれつづく 薄暑かな

 短夜や 夢は白々と 明けにけり

 甥よりの 送付うれしき 新茶かな
 【 二〇一七年四月の俳句 】

 木も花も 目ざめて山は 笑いける

 提灯は ゆれて花待つ 川辺かな

 手にとれば 筆の形や 土筆つむ

 一夢で 咲きそろいたる 桜かな

 読みかけの ページめくられし 青嵐

 雪柳 しだれて小米 散らしけり

 身にしみる 勿忘草の 花言葉

 花さそう 嵐を耐える 桜かな

 雨に咲く 椿一輪の いと淋し
 【 二〇一七年三月の俳句 】

 柳の芽 吹き出しゆれる 風情かな

 何時誰が 納めてくれし 雛の段

 路地ぬけし 声はあわれや 猫の恋

 春夕べ 陽はおだやかに しずみけり

 下萌えの みどりこくなり 今朝の雨

 春眠や 夢のつづきを 思い出し

 よろめいて 春一番を 感じけり

 巣に入れば 夢はそれぞれ 百千鳥

 冬桜 友と待ち合う 場所となり
 【 二〇一七年二月の俳句 】

 ちぎり雲 流されちぎれ 流れゆく

 初暦 未知の世界を 開きけり

 小さいけど キラリ身をさす 寒昴

 冬紅葉 ひときわ目立つ 枯木道

 巣にもどれば 夢はたのしき 百千鳥

 大学に つづく道なり 山笑う

 ものの芽を あつめてたのし 庭造り

 渡り鳥 波にのり着きし 川の駅

 大空を 開いてくれし 春の鳥
 【 二〇一七年一月の俳句 】

 元旦は かくれて神の おはすなり

 山茶花は こぼれて川を 流れゆく

 冬の月 雲高くして 光り冴ゆ

 孫の病 ただ祈るのみ 除夜の鐘

 風呂吹きを かこむ家族の 無口なり

 山暮れて 北吹く風の 身にしみる
 【 二〇一六年一二月の俳句 】

 寄せ鍋の 三人家族は 淋しけり

 青信号 渡る子供の 息白し

 焼芋は 犬もよろこぶ 孫家族

 冬鴎 帰えり着きたり 紀伊の海

 行く年に 追いつかれずに 座りけり

 冬の空 はっきり山山 山つなぐ

 山は眠る みかんは光る 紀伊の浜

 夢さめて 朝まで長し 夜半の冬

 水仙は 清楚に咲いてる 庭の隅
 【 二〇一六年一一月の俳句 】

 寄せ鍋や 三人家族も 楽しけり

 三寒より 四温の多き 今年かな

 枯葉掃く 音カラカラと 庭掃除

 手を合わせ 託す願いや 寒昴

 杖おけば 力ぬけたり 冬の風

 冬ざれや 庭の花の名も 知らぬ間に

 飛行雲 のこして澄みし 冬の空

 冬の日や 帰りは早き 夜の道

 風呂吹きは とろりと味噌の 味くらべ
 【 二〇一六年一〇月の俳句 】

 色変えぬ 松や三百手の 宮守る

 出世して 鰤と呼ばれし 今日の膳

 小さくとも 紫光る 茄子畑

 秋の蝶 ようやく石垣に 止まりけり

 バラの香に 顔よせ合えり 朝の席

 廃庭に コスモス残され 生きて咲く

 孫よりの うれし敬老の 送りもの

 バラ二輪 心やさしき 人寄せる

 飛ぶ雀 声すみている 小春かな
 【 二〇一六年九月の俳句 】

 明けて尚 月下美人の 美しき

 リハビリの 窓や蝶々に のぞかれし

 銀杏の 色目立ちけり バスの道

 片陰を 行き交う人もなく 暮れにけり

 風鈴に 夢やぶられし 昼の風

 青芒 風に舞いつつ 身を守る

 燕帰る 南の国を 思いけり

 忘れずに 又帰りくる 渡り鳥
 【 二〇一六年八月の俳句 】

 ひまわりは 真直ぐ立ちて 首をふる

 からおきて 庭の何所かで 蝉の声

 水面の葉から のぞき出し 蓮の花

 とめどなく 夕陽落ちたり バスの窓

 病癒え 空に手合わす 星まつり
 【 二〇一六年七月の俳句 】

 朝風に 青田の波の 美しき

 風に舞う 五色の願い 星まつり

 一切れの 雲のかげもなし 梅雨晴間

 ふまれつつ 咲きほこりけり 日々草

 風の中 今日の月待つ 月見草
 【 二〇一六年五月の俳句 】

 涼しさを 求めて唄う 浜辺歌

 西日落つ 偉大な太陽の 姿なり

 病院の 窓にまぶしき 夏の雲

 リハビリに つかれし夜の 夏時雨

 終電の 音も静かなり 夏の月
 【 二〇一六年四月の俳句 】

 芽をふかし 我は流るる 春落葉

 我は臥す 白き巨塔に 夏の雲
 【 二〇一六年三月の俳句 】

 白梅は りりしく咲きて おだやかに

 雨雲は 消えて夕べは 春の色

 寒椿 一輪残し 春を待つ

 柳の芽 ふき出し川を 泳ぎ居り

 赤飯の 豆も光れり 雛の膳

 芽はふきて 流れて来しか 枯れ落葉

 花だより 日々にふくらむ 紀伊の山

 雀の子 母と去りしか 巣を残し

 朝風呂や 窓一面の 若葉見て
 【 二〇一六年二月の俳句 】

 太陽を くぐりくぐりて 冬の雲

 山覚めて 田畑も色づく 麓かな

 思い出は 思い出呼びけり 節分会

 暖冬は 何よりうれし 老の日々

 桜咲く 三寒四暖も 待ち切れず

 木も花も 育ちて狭庭 春を待つ
 【 二〇一六年一月の俳句 】

 元旦は 心静かに 迎えけり

 大口を あけて獅子舞の 足おどる

 獅子舞と カメラに向かう 笑顔かな

 初雀 声も鮮やか 今朝の空

 客送り 見上げし月の 寒々と

 山眠る 幾重の山も 静かなり

 初東風は 嵐となりし 夕べかな

 初雪や つもるを待てる 子供達
 【 二〇一五年一二月の俳句 】

 よき年をと 夜空に祈る 枯れ芒

 水仙は みじかくされて 洗面場

 雪燦々 孫のふる里 夢の中

 凜として 桔梗咲きたり 草の中

 重なりて 静かに眠る 冬の山

 夕ざれて 色増す松の みどりかな

 古塀に 色冴えて咲く 冬椿

 姉妹の 無き淋しさか 冬時雨

 押し葉して あざやかになり 冬紅葉
 【 二〇一五年一一月の俳句 】

 大根は 皿より白き 今朝の味

 挨拶の 小学生よ 息白し

 鰯雲 ウロコも散らす 今朝の空

 月と別れ 川面で遊ぶ 芒かな

 細口の びんが似合えり 薔薇一輪

 みじかき手 伸ばし柿取る 夢の中

 万年青の実 かくれて冬を 迎えけり

 知らぬ間に 降りて止みしか 冬時雨

 大根は スポッと抜けし こころよさ
 【 二〇一五年一〇月の俳句 】

 なつかしき 雪ふりかぶる 富士の山

 名月は 静かにのぼる 空の色

 十六夜や 思うことなく 見上げけり

 紀の川に 名月落ちて バタフライ

 山合に はかなく消えし 秋の虹

 バス降りて 秋夕焼に しばし立つ

 アレンジに オクラを活ける 風情かな

 爽やかに 物言う人や 我もまた

 朝からの 素足がさそう 夜寒かな
 【 二〇一五年九月の俳句 】

 淋しさを すてて見に来し 曼珠沙華

 思い出の 夜となりけり 月見酒

 夕風に ゆられて月待つ 芒かな

 夢に見し 部屋は広かり そぞろ寒

 花も葉も 皆うつ向きし 白露かな

 山肌を はっきり見せり 秋の空

 梅干せば 三日三晩の 香りかな

 することは すべて終りし 夏の果て

 涼しさに ふと出掛けたり バスの旅
 【 二〇一五年八月の俳句 】

 大海に 浮かべて見たし 夏の雲

 風鈴を 拭けば今年の 音となり

 蝉しぐれ 休み校舎に ひびきけり

 一声で 夏告げ去りし 時鳥

 庭すみに そっと咲きけり 韮の花

 松の幹に 今日は目ざめの 蝉しぐれ

 朝風に ゆれてさわやか 青田かな

 雲の峰 川を渡りて 流れけり

 花の色 変りゆく庭 秋近し
 【 二〇一五年七月の俳句 】

 月下美人 恋は流れし 今朝の雨

 つつがなき 人に逢いけり 夏の雲

 願いごと 重たき笹や 星まつり

 老人の 金魚すくいや 浮人形

 七夕の まつりたのしき 昼餉かな

 枝切られ 椋鳥さわぐ 屋根の上

 短夜や 一番電車の 声近し

 孑孑(ボウフラ)の 足は短し 踊るさま

 向日葵は それぞれ向いて 日暮れけり
【 二〇一五年六月の俳句 】

 松の庭 二輪のバラが 目立ちけり

 衣更え 今日より心 入れかえて

 春の色 夏の色も無し 梅雨の入り

 水光り 夕日に遊ぶか 源五郎

 うす雲に かくれ西日は 沈みたり

 寝つかれぬ 夜の心経 合歓の花

 海猫の 声もききたし 浜の宿

 あと少し 袋の枇杷よ 待ちきれず

 今朝の窓 孔雀サボテン 開き居り
 
 【 二〇一五年五月の俳句 】

 山近く 海は静かに 風薫る

 台風の 前の静けさ 百合開く

 大漁の 浜風に干す 白子かな

 祝いあり 比翼つくろう 初夏の夜

 花落ちて みどりばかりの 狭庭かな

 つんと立ち 畑に残る 葱坊主

 無理通し 懺悔に暮れし 五月闇

 つばめ巣に 入れば家族よ 軒の雨

 忘れずに 勿忘草も 咲いていし
 【 二〇一五年四月の俳句 】

 車椅子 胸暖かき 花見かな

 いとけなき 若葉を引くや 庭手入れ

 なつかしき 古巣さがすか つばめとぶ

 老いて尚 今日はうれしき 雛あられ

 花びらは 皆うつむける 花の雨

 春泥を 飛びこえ遊ぶ 子供かな

 提灯は 小雨に光る 桜道

 南より 春持ちかえる 初つばめ

 笑い声 一日絶えず 四月馬鹿
 【 二〇一五年三月の俳句 】

 孫の年 数えっ見るや 雛の段

 ゆっくりと 野上変えゆく 春の土

 衣更着と 誰が名づけし 今日今宵

 庭の木々 冷たく光る 春時雨

 思い抱き 川流れゆく 雛の顔

 葉の香り 肌に残して 桜餅

 山覚めて 町は色づく 車窓かな

 春めくと 云われど冷たき 朝の道
 【 二〇一五年二月の俳句 】

 立春とは 名ばかり深き 山の色

 客送り 初夢も見ず 明けにけり

 伸び伸びて 花咲かせけり 小葉牡丹

 何事も なき一日の 余寒かな

 針供養 忘れて今朝の 手つくろい

 春一番 枯葉も花も 舞い来たり

 福笹の 小判ゆれ行く 宵参道

 紀伊の山 ようやく覚めし 峠かな

 春めくや 杖にはやさし 草の上
 【 二〇一五年一月の俳句 】

 三百年の 古木くぐって 初詣

 長かりし 我が身にひびく 除夜の鐘

 親子孫 久しく会って 千代の春

 挨拶も そこそこ手出す お年玉

 ふる里の 無き淋しさもあり 三ヶ日

 久々の 老友へのたよりや 冬時雨

 朝焼けの 色して冬日 沈みけり

 月の夜は 何を思うか 枯れ芒

 落ち椿 そのままそっと 歩きけり
 【 二〇一四年一二月の俳句 】

 新畳 香りは今宵の 夢の中

 何事も まかせて行く年 数えけり

 草紅葉 山に劣らぬ 川辺かな

 湯豆腐が 箸にかからぬ 年思う

 着て見れば 恥ずかしもなし 冬帽子

 植木師の 手入れ終りて 寒雀

 今日の雲 雪を含めて 進みくる

 部屋だけの 暮らしつづきし シクラメン

 椿バラ 障子に影絵 冬ららら
 【 二〇一四年一一月の俳句 】

 濃く薄く 山うるおいて 冬近し

 葉の奥で つつましく咲く 万年青かな

 冬もみじ 枯葉の中で 光りけり

 風のままに 芒花散る 月の影

 難しい 問題解けず 夜長き

 ねんねこの 夢は忘れし 卒寿かな
 【 二〇一四年一〇月の俳句 】

 早々の 刈田で遊ぶ 烏かな

 この道よ 今年もカンナ 燃えていし

 ほぐれつつ 空泳ぎいる 秋の雲

 マスクして 心は若し 朝のバス

 長き夜と 言いつつ夜長の 一句かな

 心よき 台風一過 今朝の空

 コスモスは 思い思いに 遊び居し

 有難き 説教なりし 秋時雨
 【 二〇一四年九月の俳句 】

 土手の道 桜一本の 紅葉かな

 平凡な 庭に夏菊 似合いけり

 十六夜は 雲がくれにし 今宵かな

 今からの 命よ月下 美人咲く

 夏布団 取り合って孫の ざこ寝かな

 あの世へは 行かず戻りし 秋の風
 【 二〇一四年八月の俳句 】

 窓あけて 今朝の目ざめの 蝉しぐれ

 寝つかれぬ 夜の一句や 夏時雨

 風になびく 青田の上に 座りたし

 紀伊の山 てっぺんかけたか 時鳥

 なつかしき 孫にも会いけり 盆の月

 嵐にも 負けず光れる 柿若葉

 雲の峰 山と家をも つなぎけり

 親子亀 つましく泳ぐ 葦の影

 寝室に そっと置きけり 合歓の花
 【 二〇一四年七月の俳句 】

 真直ぐに 伸びて月待つ 青芒

 草むらで 一本の桔梗 目立ちけり

 つばめの子 巣立ちて静か 淋しけり

 白鷺は 青田に降りて 風情あり

 山合いに 入り日残りて 夏淋し
 【 二〇一四年六月の俳句 】

 打ち水に 夕日かがやく 路上かな

 湯上りに うちわが似合う 頃となり

 うたた寝の 夢深かりし 薄暑かな

 巣づくりに つばめ飛び交う 夕べかな

 孫達が うつる気もする 菖蒲の湯

 空の色 今年も静かに 梅雨に入る

 袋とれば 見事に育ちいし 枇杷の朝

 春雨に 負けぬ風情や 夏時雨

 七夕の 願いは一つに 決めにけり
 【 二〇一四年五月の俳句 】

 春雷に 心おどりし 夕餉かな

 庭すみの 山吹ばかりが 目立ちけり

 大根は 花盛りなり 春の蝶

 春こたつ 今朝は別れの 目ざめかな

 初がつを 見たしつりたし 土佐の海

 山見れば ふる里の色なり 夏近し

 そのままで そっと生けおく 山つつじ

 五月闇 大根花の 白きかな

 せせらぎや 葉桜見上げる 人も無く
 【 二〇一四年四月の俳句 】

 幾年か 空家に誇る 葱坊主

 お地蔵に 手を合わす子や 春の風

 亀の子が 車止めけり 土手の道

 杖つけば 肌にやさしき 春の土

 子雀が 餌をつつきいる いとけなさ

 雨雲は くづれて今日の 風光る

 未練なく ポツリポツリと 落椿
 【 二〇一四年三月の俳句 】

 目は覚めて 春は曙 山青き

 白魚の 真白き味を 好みけり

 心よき 風に吹かれくる 春落葉

 針供養 忘れて老の 針仕事

 白梅は 咲きて気品を 出しにけり

 雛出せば 猫もよろこぶ 我が家かな
 【 二〇一四年二月の俳句 】

 旅の宿 梅一輪の あたたかさ

 春めくや 施行雀の ふっくらと

 夜になり 又冴え返る 冬着かな

 山笑う 野も川も土も 笑いけり

 針供養 淡路の宮に 捧げけり

 娘に手を 引かれ卆寿や 春の旅 
 (卆寿(卒寿)…九十歳の事)